薩摩琵琶鶴田流を学ぶ中で、技術だけでなく「姿勢」「所作」「音」「歌」すべてにおいて、洗練された芸を目指すことの大切さを感じています。
いいかえれば、お稽古を続ける中で、だんだんと「ただ弾ければいい」ということではなく、「どう聴いてもらうか」「どう見せるか」が大切なんだな、と感じるようになりました。
今日は、私が普段のお稽古で大切にしていることを、いくつかご紹介したいと思います。これから琵琶を始める方や、同じようにお稽古をされている方の参考になればうれしいです。

1.座って弾く姿を不動に保つ
姿勢をしっかりと、動かない
まず大事なのは、座ったときの姿。
琵琶を構えて座ったら、その姿をできるだけ動かさないように意識しています。頭を左右に揺らしたり、琵琶が動いてしまうと、見ている人の集中が途切れてしまうことも。静かに、凛とした佇まいでいること。それだけでも、伝わるものがあると思っています。
2.撥の動きは必要最小限に、効率的に
撥は、必要な動きだけで美しく
撥(ばち)の動かし方も、とても大事です。
力いっぱい振るのではなく、必要な動きだけで、できるだけ無駄のないように。鶴田流は激しく撥を動かす場面も特徴的ですが、無駄な動きをさせなくも、しっかり響かせることができますし、そのほうがかえって美しい音で響きます。つい動きが大きくなりがちですが、落ち着いて丁寧に、を心がけています。
3.発声は物語を届けるために
歌は、物語を届ける気持ちで
歌のときは、「伝える」ことを大事にしています。
声を大きく出すことが目的ではなくて、聴いてくださる方に、物語の情景が聴く人の心に浮かぶように。薩摩琵琶は「古語」を使いますので、なおさら一語一語を丁寧に、自然な流れで。語頭だけ大きくしたり、唸るように声を出したりするよりも、心を込めた声のほうが、ちゃんと届く気がしています。
4.琵琶の音は粒を揃えて
一音一音を、大切に
演奏では、音の「粒」をそろえることを意識しています。
テンポが速くなると、つい勢いでごまかしてしまいそうになりますが、それは禁物。どの音も大事に、一音一音、心を込めて出す。ゆっくりでもいいので、しっかり響かせることを大切にしています。焦らず、ていねいに、が合言葉です。
総じて:洗練された姿と音を届けるために
目指すのは、洗練された琵琶奏者の姿
琵琶の世界では、音だけでなく「所作」や「姿」も、演奏の一部です。
琵琶の演奏は、音だけでなく、姿、所作、歌、すべてが合わさって一つの芸になります。お稽古の積み重ねを通じて、余計なものをそぎ落とし、静けさの中に凛とした美しさを宿す。
静かで落ち着いた中に、美しさや力強さが宿るような演奏を目指して、これからもひとつひとつ、丁寧に積み重ねていきたいと思います。
もし、これから琵琶を始めてみようかなと思っている方がいれば、ぜひご一緒にこの奥深い世界を楽しみましょう!